テアトロ・ド・ペラの憂鬱
ピ―――ンッ。
焦ったデリアスは手袋を外し、器用に動かせる素手で挟まった布を窓枠から取り出した。
そして耳を澄ませ、「眉なし牧師」が降りてくるのを待つ―――が、すぐそこまで降りてきていたというのに、「眉なし牧師」はまた引き返していった。
(…っ神様!)
この時ほど、彼が神に感謝した日はない。
「眉なし牧師」、もといピピが引き返した理由は、「昼前の情事」が原因ではあったが。
そうしてデリアスがテアトロ・ド・ペラのダストボックスからパンティを回収したのと同時、緑頭がひとりで帰ってきた。
その僅差に、デリアスはもう一度神に感謝し、キスを贈る。
ついでに言えば、黒髪のトレンチコートの男は昼過ぎに帰ってきたようだった。
金髪のマッシュルームは、恐らくは夕方、或いは明日以降。
その頃には、そばかす女がパンティがないと騒ぎ立てているだろう。
「ぷぷぷ」
こうしてデリアスは、計画と偶然が見事に融合した末、輝かしい成功とパンティを手にしたわけである。