テアトロ・ド・ペラの憂鬱
ロシア人宜しく、博識で合理的。
容姿や目尻が柔らかい印象を与えるせいか、初対面にはウケがいい。
が、親しくなってくると口の悪さと口煩さにかなりウンザリする。
平気で「まんなっじゃ」(よろしくない言葉。日本人ならまず使わないかも)とか口にする癖に、もとは神父だったらしい。
左手首に黒十字架のタトゥーが入っている。
それを見たアパルトマンの住人達に、「レッスン(青春社交ダンス映画)の主役じゃねえんだからよー!ぎゃははははっワルツ踊ってみろよ!」と派手にバカにされて以来、シルバーアクセで隠すようになった。
あ、こいつ繊細なんだな、と皆が思った瞬間。
「ピピ、セッタはどこ行ったの」
そしてあとふたり。
あとふたりが済めば、赤いヒールから素足になった彼女の紹介を始められる。
別に彼女を後回しにしたのは、彼女に素晴らしい長所があるとか、ぶっとぶような秘密があるからではない。
一応、レディは特別扱いとしてトリに回させていただこうと思う。
なにせここはアモーレ!女性を崇める素敵な国、イタリアなのだから。