*SWEET LESSON*
「屋良 義人」
びっくりするほど良く通る低い声……。
その声で奇声がピタッと止む。
うっすらと目を開けてみると、“Y”のすぐ後ろに大和が立っていて
その襟足をがっちりと掴み、宙に上げていた。
「グェ……な…何故お前が…僕…の…なま…」
「あ?名前だけじゃないわよぉー♪
…27歳、某工科大学卒業、成績は…下から数えた方がいいみたいだな。
○○駅から徒歩10分にある実家暮らし。母親は究極の過保護な奴みたいだな。そしてお前はマザコン。
電話番号は×××-××××-××××。
理想のタイプは、深夜アニメの“胡蝶蘭 アゲハ”。
所持する彼女のフィギュアは50体を超える。
完璧なるニートで
バイト先は
ニャックドバーガー。
…どう?凄いでっしょぉー?」
「何でそんな情報…。
っていうか、その人青白くなっちゃってますが…」
おっとそうだった。
悪びれた様子もなく、高い位置から手を離した大和。
ぐしゃりと気味の悪い音を立て、地面に落ちたまま動かない“Y”を見て、心から哀れに思ってしまった。