*SWEET LESSON*
*Three*
「つっかれたー…」
教師になって、早一週間。
入学式を明日に控えて、校舎はそれ一色になっていた。
体育館を紅白の幕で覆い、新入生用の椅子と、保護者用の椅子をセッティングし終えたところで今日の仕事が終わる。
「いよいよ明日ねー!!どんな子が来るか楽しみだわ」
腰に手を当てながら、爽やかに危ない考えを口にするのは もちろん綾さんだ。
呼び方が変わってるのは
飲み会の後、彼女に私用の時は名前で呼ぶようにと言われたのだった。
その言葉に甘えて、生徒の前以外ではそう呼ぶことに決めた。
「綾さんは何で教師になったんですか?」
「は?何よ、いきなり…」
「いや、ただ 若い男の子にすごく反応を見せるもんだから、邪(ヨコシマ)な気持ちで教師になったんじゃないかって思ったんですけど…」
あ。マズイ。
綾さんの額に血管が浮いているのを見てそう思った。
「あんたねぇ。あたしの事なんだと思ってるわけ?
…まぁ、でも
なりたくてなったんじゃないって事は認めるわ。ただ、なんとなく
気付いたら教師になってた。
やりたいことが見つかんなくて。
これでも頭は良い方だったから、とりあえずで受けた教員試験が受かっちゃってね。
別に教職に魅力は感じなかったけど、やりたいことがないならここで働けって言われたんだよねー…」