*SWEET LESSON*
大和がお父さんと電話してるなんて、珍しいな。
何かあったのか?
流石に会話までは聞こえなかったけれど、
「うん…うん…」
と相槌を打つ彼の表情がだんだんと曇っていくのが分かってしまって。
何か悪い事でもあったのかと不安になってきた。
それに、時折こちらをちらりと見てくるのは何故だろう。
「分かったよ。…じゃあ30分後に」
ぴ。
明るいのはその音だけで。
誰もが無言になっていた。
「大和…あの…」
「わりーな」
何したの? と聞く前に謝られてしまった。
「ちょっと野暮用でさ。一緒に帰れなくなった。
斐二。悪いんだけどコイツ送ってくれない?」
「……別に良いけど」
腹減ったけどな。
ポツリと呟く国枝君に、再度「悪いな」って言ったあと
「後で電話する」
と言い残し、一人でタクシーを捉まえて
さっさとどこかに行ってしまった。