*SWEET LESSON*





「お待ちしておりました。こちらです」



玄関先に立っていた、キツそうなメイドが無表情であたしを案内してくれる。



歩くのも何だか早くて。



嫌がらせを受けているようにしか思えないッ!!

凄い所に足を踏み入れちゃったのか、と不安になる。



10メートルほど先でメイドが止まってこちらを振り返っている…


「…すみません。早すぎましたか?」



「え!?…え、えぇ、まぁ……少し」


“急いでください”トカ言われるのかと思ったら、以外に優しいのね…



「このお屋敷は広いですから、私達メイドは少々早歩きになってしまいます。奥様をお待たせしてはいけませんから…。

でも、お客様ですものね。少しくらい遅くても構わないですよね…」



すみません


と頭を下げられてしまった。



「いえ、良いんです。これからゆっくり歩いて頂ければ…。

それより、ちょっと気になったんですけど、客人を案内した事が無いんですか…?」



歩きながら、と促され


今度はゆっくりと 床に張り巡らされた絨毯の上を歩く。



「……この家は、本当に家族だけのものにしたいとご主人様が仰られたので…。

仕事の話は一切持ち込まないように、客人用のお家を他にご用意されました。


結局ご主人様は会社かそちらに籠もるようになられましたから、殆ど別居状態で…。


だからと言って家族仲が悪いわけではないようです」



「…へぇ…」



それって、仮面夫婦トカじゃないよね…?


「あ、この事はどうぞ、ご内密に…」


「分かってます…。ありがとうございます」


この人、本当に伊集院さんのお家が心配なんだろうな…




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