*SWEET LESSON*




かちゃん


ガラステーブルに、Hから始まる高級カップが置かれ 上品な音をたてた。



「…そう、それで薫子は家を飛び出したんだね。それで


そこからどうしたのかな?」


その質問は国枝君に向けられている。当の本人は、まだ泣いていて喋ることすらできないらしい。



「…道に、迷ったらしいんです」


冷めた目で彼女を見てから、そう呟く国枝君。


なんでも。


塾へ向かう途中、自分の学校の制服を着た女の子が

歩道でうずくまっているのを発見した国枝君は、わざわざ車から降りてどうしたのかを聞きに行ったらしい。


それで泣きそうな薫子さんを拾った と。


このお父さんの家に来ようとしたが道が分からず、当てずっぽうに道を進んでいた所で力尽きたとか。



「俺が来なきゃどうするつもりだったんだ…」


タクシーでも
バスでも

「簡単にこんな目立つ場所、来れただろう」



って呆れてる。


「えッ!?ここってそんなに目立つの!?」


お父さんーーー???自覚なかったんですかッ!?

話が脱線した事に気付いたお父さんは、一つ咳払いをして。


「とにかく無事でよかったよ…。


…薫子?皆さんにこんなに心配をおかけしたんだ。謝りなさい?」



と、膝を抱えている彼女に諭す。




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