*SWEET LESSON*
「…安本センセェー。あんた、とんでもないことしてくれたね…?」
その声は今まで聞いたことのないくらい低くて
安本さんに向けられる鋭い目は あたしでも身震いするほどで
彼が柳瀬さんだという事を忘れさせる。
「いや…その…これは…ッ…」
先程あたしを脅した時とは一転した弱々しい声。
冷や汗を掻いてしどろもどろする安本さんに 更なる追い打ちをかけた。
「あんた、いつまでも汚い手で腕握ってんじゃねぇよ。殺すよ?」
だけど。
それは柳瀬さんの声とは全く違う所からで。
助手席から姿を現したその人に あたしは別の意味での恐怖を覚えた。
大和だった。
何故こんな所に居るのか。
何故柳瀬さんの車に乗っていたのか。
そんな事はどうでもいい疑問だった。
それよりも、こんな姿を 状況を
彼に知られたという事がショックでならなかったんだ。