*SWEET LESSON*
*sugar taste*
*One*
「送るから、二人とも乗ってけよ」
柳瀬さんの親切心は、あたし達を窮地に追いやる。
だって、ね。
あたしと大和の家はお隣で。
他人のフリなんてしたばっかりに、今更知り合いだなんて言い出せる訳ないし。
そんな事したら
『何で嘘まで吐いて知らないフリをしたのか』
なんて色々と疑われるのは目に見えてる。
ここは…ッ!!
「あたし、大丈夫です。電車の方が早いし…」
そう断ったんだけれど。
「駄目だ。このまま一人で帰すのは心配だからな」
と軽くかわされる。
懲りずにまた口を開こうとしたあたしだけど
大和に肩に手を置かれ、阻止されてしまった。
「遠慮する事無いじゃないですか。ほら、一緒に帰りましょ?」
にっこぉぉおおーッ!
満面の笑みを浮かべてらっしゃるけれども。
何考えてるわけ!?
うろたえるあたしを後部座席に押しやって、
「じゃ、安本センセーさよーなら♪」
と、まだ正座していた安本さんに明るく挨拶なんかしてる。
そして
挙動不審のあたしを乗せた車は
「いっきまーす♪」
となんかのアニメみたいな声を出す柳瀬さんの運転で 軽快に走り出したのだった。