*SWEET LESSON*
「…母さん、ノックした?」
涼しい顔で尋ねる大和。いや、うん。別に言えないことしてたわけじゃないけど、何だか気まずい。
「したけど、さなちゃんの大きな声で聞こえなかったんじゃないかしら。下まで笑い声が聞こえてきたから笑い茸でも食べたんじゃないかと思って見に来てみたの」
笑い茸て…。大和のお母さんも天然な節があるからなぁー。
しかし、大和は何と釈明するのだろうか。
少しは慌てた所を見れるんじゃないかと考えたあたしが馬鹿だった。
大和は最初から用意していたセリフのように、慌てることなく自分の母親を納得させてしまった。
「心配しなくても大丈夫だよ。
今ね、さなが学校で新入生の歓迎会でやる手品の練習してたとこだから。
腕輪抜け。
でも失敗しちゃって。あまりの情けなさにさなが突然笑い出しただけだから」
普通なら納得しかねるだろうけれど
相手は大和のお母さんだから。
「そうだったのー!!教師も大変ねぇ…。おばさんでよかったらいつでも練習相手になってあげるから、思う存分練習しなさい!!ね??」
「は…ハハハ…」
シリアスな場面以外は“こう”なんだ、おばさんって…。
あたしは笑いながらその場をやり過ごした。
「ご飯できたから、さなちゃんも食べて行きなさい?ゆいかちゃんには連絡してあげるから♪
今夜はすき焼きよ」