*SWEET LESSON*
恐る恐る後ろを振り向くと
「スミマセン!」
「いえ…前を見てなかったこの子が悪いんです。ほら、謝りなさい」
というやり取りがされていた。
よかった。聞かれたってわけではないらしい。
安堵のため息をついて、前に向き直る。
「それで、言ってなかった事があるんだけど…。
実は、うちの高校に大和が入学したのよ!!」
「「はぁぁ!?」」
薫ちゃんと真希の声がかぶった。
和樹はただ黙ってあたしを見ているだけだったけど。
「だから、堂々とお隣さんが彼氏なんてこと言っちゃったら直ぐにばれちゃうと思う…。実際、本当に危なかった事だってあるんだから」
大和の機転がなかったらきっと今頃クビ宣告を受けていただろう。
「そう…。あんた達って、とことん不運よねぇぇ」
可哀そうに…
薫ちゃんはそう言ってるけど、自分だって不毛な恋ばかりしてるじゃん。
聞けば、今までストレート男子しか好きになった事がないらしい。
良い人なんだけどね…。
「それより薫ちゃん、仕事はどう?」
大学ではデザイン学科を専攻した薫ちゃん。有名なデザイン事務所に就職が決まって、狂ったように踊り狂っていたのが昨日のようだ。