あなたがいてあなたといて【短編】
わからない…
わからないよ…
夏惟がわからない。
「夏惟…、好きな人いるのに…こんなことしていいの?」
同情なら、自分が傷つくだけだもん。
こんなことしてほしくないよ。
「夏惟…離して…?」
そう言うのに夏惟の腕によりさらに、強く抱きしめられた。
「っんで、わかんねぇーんだよっ?」
「え…?」
「なんで、そんな鈍感なわけ?」
身体が解放されたかと思うと目の前には意地悪に笑う夏惟。
「好きでもねーやつを抱きしめねーし」
え…?
それって、それって…
あたしを
「あたしを…スキ、ってこ、と…?」
あたしの自惚れなんかじゃないよね?
「俺、やっぱ花音が好きだわ」
諦められなかったって笑う夏惟。
夏惟…。
あたし、嬉しいよ
あたし、今、すごく幸せ。
もし、夢なら覚めないでください…――――――――――――――――――