あなたがいてあなたといて【短編】
もしかしたら、あれは嘘でこの女の子が好きなのかもと悪い予想ばかりが浮かぶ。


シンとしたこの雰囲気が辛い。


きっと、女の子も一緒だろう。


いや、あたしより辛いと思う。


すると、夏惟はベンチに腰かけて優しく微笑むとその女の子の手を包むように握ると


「俺、1人しか好きになったことないぜ?」


ってさ…


曖昧な夏惟の返事。


あたしを好きともあの女の子を好きとも解釈できる。

そして、その女の子は自分を好きと解釈したのか「ありがとう、ずっと一緒だよ」そう言って夏惟の肩にそっと頭を置いた。


ズキン…


なんでだろう?


夏惟がその女の子を好きだってわからないのに、すごく苦しいよ。


痛いよ。


目頭が熱くなるのを感じながら茂みからそっと抜けて夏惟と女の子に気づかれぬよう背を向け帰った。



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