あなたがいてあなたといて【短編】

先生が来る頃にはあたしの涙は引いていた。


目は真っ赤で腫れてしまっていたが顔を伏せておいた。


ずっと、机に顔を伏せて顔をあげないあたしを夏惟はきっと不思議に思ったよね?


それとも、あたしのことなんか気にも止めてない?



「はい、ショート終わり!」


「起立、例」


「「ありがとうございました」」



ガララ…―


ショートが終わり、先生が出ていくとあたしは、立ち上がりまーやの元へ行こうとした。


一時サボるということを伝えるためにだ。


こんな状態じゃ授業なんかまともに受けられない。


なのに…


「おい」


声をかけられ立ち止まる。

その声にビクッと身体は反応した。


「な、何?」


振り返ることなく答えると声の持ち主はずんずんとこちらへ近づいてきた。


ま、まずい…っ


そう思ったあたしはわざと用事を思い出したふりをした。


「あ!先生に呼ばれてるんだったーアハ、ハ」


顔を隠すように俯き加減でその人の横を通りすぎる。


「花音…」


ビクッ…―


今、名前で呼ぶなんて反則だよ


しかも、そんな優しく呼ばないでよ…



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