あなたがいてあなたといて【短編】


あたしは、ちょっと怒ったように「ちゃんと読んでよね!前田くん」とわざと名字で言ってみた。



そしたら夏惟はめんどくさいといった顔をして立ち上がるとポケットに手を突っ込み


「先生、具合悪いんで保健室いってきまーす」


と、教室を出ていってしまった。



怒らせちゃった?


でも、夏惟があたしに気づかないから悪いんだよ。


と言い訳してみたけど、やっぱり忘れちゃったのかなーってやなことばかり考えてしまう。



もう、6年経ったんだもん


そう思おうとしたけど、無理だった。


だって、だって


彼を想っていた年月が長すぎたんだもん。



だから、夏惟もそうかな?なんて淡い期待を抱いていたの。


でも、そんな浅はかな考えはすぐに崩れていった。


泣きたいけど、授業中。


あたしは、ツーンが熱くなるのを感じながらシャーペンを持って授業に集中した。


いや、正しくは集中なんて出来るわけないんだけど…



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