真面目なあたしは悪MANに恋をする
「あ…ちょ、と、怪我はしてないよ! 尻もちをついただけで、怪我はしてない。それに、ケンケンが声をかけてくれたから、それ以上のことはなかったし」

あたしは片岡君のコートを掴んだ

細くなった片岡君の目が、いつもの優しい瞳なってあたしを見てくれた

「『加藤が車を出るとき、一緒に逃げようって手を出したのに、断ったんだってな。んで、逃げる俺らを見て、笑ったって言ってたぞ』って寺島が言ってたっす。んで、チョーの女だろ!って怒鳴って、肩を突かれたんすよ」

ケンケンの報告に、片岡君の目が再び細くなった

ひぇ、ケンケン、なんてことを言うのを!

片岡君を怒らせてどうするの?

「たとえ怪我がなくても女性に手を出す男って大嫌いなんだよな」

片岡君の声とは思えないほど、重低音な声を出してきた

「しかもそれが、チョーの好きなおん…なっ…ってはい、すみませんっ!」

片岡君に睨まれたケンケンが、謝るなり頭を下げる

「あ…えっと」

何か言わなくちゃ…と思って声を出してみるが、何を言っていいのかわからなくて、あたしは苦笑した

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