真面目なあたしは悪MANに恋をする
『もしかして…今、遊んでる最中だったりした?』

片岡君が申し訳なさそうな声を出す

「あ、いえ…」

『予定があるなら、他の人に聞いてみますから』

「あ、大丈夫ですよ。行きます!」

「うわあ、行くってぇ…デートかもぉ」

茉莉がまた大きな声を出す

「ちょ…ちょっと、茉莉! バイトの話だよ」

『茉莉?』

ひゃあ、片岡君の声が低くなったよ

「じゃ、すぐに行きますから! 失礼します」

あたしは携帯を切った

たった二文字を声に出しただけなのに、片岡君の声から憎しみが感じられた

どんな顔で言っているのかも、想像できてしまう

きっと無表情で、目を細めているに違いない

「バイトなのぉ?」

茉莉が残念そうに、口を尖らせた

「そうだよ。寺島君と音信不通になっちゃったから、キッチンに入ってくれる人がいなくて…」

あたしの言葉に茉莉の表情が固まった

茉莉の表情が曇るのも、仕方がないのだ

茉莉も、寺島君と連絡が取れないのだから

族に絡まれてから、ずっと連絡が取れていないらしい

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