真面目なあたしは悪MANに恋をする
「ねえ、葉南…怒ってる?」

茉莉がぼそっと質問してきた

「え? なんで?」

ビルとビルの合間を歩きながら、あたしは茉莉の顔を見た

ピンクのマフラーに白のコートを着ている茉莉は、鼻先を少し赤くしながら白い息を吐いていた

「だって、私、寺島君のこと黙ってから。クリスマスパーティでのこと、みんなから聞いたよ」

「ああ、泣いちゃったって話? もっと前に知りたかったよ。今は…もう何とも思ってない。寺島君も、加藤さんも…別にもう魅力なんて感じないし」

「…だね。でも私、まだ寺島君が好きだよ」

茉莉がさびしそうに笑った

「守ってもらえなかったときは、ショックだったけど…どうしてかな。まだ寺島君が好きで、会いたいんだ。でも連絡がつかない。メールしても電話しても」

うん、今の寺島君は病院にいるから、携帯に連絡しても返事は返せないんじゃないかな?

片岡君の携帯にきたケンケンからの報告メールには、救急車で運ばれて、入院したって言ってたから

足の骨と肋骨が折れて、擦り傷や打撲が酷いってメールにあった

全治1週間だって

言いたいけど、言えない

ごめんね、茉莉……

あたしは知らないってことになってる
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