真面目なあたしは悪MANに恋をする
「片岡君、背が高いからおいしい空気がたくさん吸えてそう」

あたしの言葉に、片岡君の視線が下に向いた

「どこだって同じ空気だよ」

「そうかな?」

おじさんたちの体臭を直接、鼻で吸い込まないだけいいような気がするけどなあ

「辛かったら、電話でもメールでもしてください」

片岡君の言葉に、思わず「空気が?」って聞きかえそうになり、茉莉のことだと気づくと喉の奥に言葉を飲み込んだ

「だって、授業中じゃ…」

「気にしなくていいです。大丈夫ですから」

片岡君がにっこりとほほ笑んだ

「あ…もしかして今日が始業式だから?」

「始業式は昨日でしたよ」

「あれ…じゃあ、なんで?」

片岡君が悲しそうな瞳で、笑みを零すと遠い眼をした

ああ、その顔をされるともう何を聞いても答えてくれないんだよね

笑って誤魔化されちゃう

言いたくないことを無理に聞きたいとは思わないけど、でも片岡君のこと一つでも多く知りたいと思っちゃダメなのかな?

「辛くなったら、連絡するよ」

あたしはそれだけ言うと、この会話を終わりにした

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