真面目なあたしは悪MANに恋をする
ガチャっとドアが開くと、さっき目にした鞄が飛んできた

俺は鞄を手で受け止めると、ドアのほうに視線を向けた

「ちょっと! 追いかけてくるとかないわけ?」

茉莉が、目を吊り上げて怒っている

「なんで俺が追いかけないといけないの?」

「きついこと言ってごめん。一緒に歌おうよ!…とか言いなさいよっ」

「無理だよね。一緒に歌う理由がない」

茉莉は荒々しくドアを閉めると、俺の前で仁王立ちする

「駅までの道がわからないのよ! 駅まで送ってよ」

俺は茉莉の言葉に、笑みを見せた

「なんで、偉そうに言うのかがわからないよね。駅まで送ってあげてもいいけど、その前にやることがあるんじゃない?」

茉莉の肩がびくっとした

「葉南のこと?」

「きちんと謝る必要があるよね?」

「謝って許してもらえるわけないじゃない」

「許してもらいたいの?」

「べ…べつに」

「なら、どうして許してもらえるかを気にするの?」

茉莉の目がきょろきょろと左右に動いた

俺は座ったまま茉莉の顔を見上げる

「謝るのは、人としての礼儀だけど…その先の許す・許さないは葉南自身の心の問題であって、君が気にする事項じゃないよね? じゃあ、なんで気にするの? 前みたいな関係に戻りたいって思ってる? 自ら関係を壊しておいて、それはちょっと望みすぎじゃない?」

茉莉が、むすっとした顔をすると俺の足をまた踏んだ

「どうしてあんたは、そうポンポンと私を傷つける言葉を吐き出すのよ!」

「事実を言ってるだけ。それで傷ついたと思うなら、それが君にとって言い当てられたくない本心だからでしょ?」


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