真面目なあたしは悪MANに恋をする
茉莉が頬を膨らませると、向い側にある椅子に腰を下ろした

ぷいっと横を向くと、液晶パネルのリモコンを手に取った

「歌うの?」

「歌わないなら、帰れって言ったのをそっちでしょ」

「そうだね」

「そうだよ」

「じゃ30分だけ。そしたら葉南に謝りに行くよ」

「……わかった」

ピピピと曲番が入力される音がする

茉莉が何か曲を入れたのだろう

「良い子だね」

曲が始まる直前に俺が呟いた

葉南に謝る気になっただけ、すごい進歩だよね

階段から突き落として、高笑いした子が、頭を下げるなんてどんな心境の変化だろう

ケンケンの愛の告白が効いたのかな?

クリスマスに赤族に追われて、恋人だと思っていた寺島に置いてかれてさ

それを助けたのがケンケンで…そのケンケンが告白してくれたときは嬉しかっただろうね

なのに、ただ葉南を苦しめたから、その復讐に使われただけって知ったときはどんなに苦しかっただろうね

見ず知らずの俺にさんざん冷たく言われて、さぞ悔しかっただろうね

俺はズボンのポケットから携帯を出すと、メールを開いた

『タイトル:カラオケに来てよ』

『茉莉が葉南さんに謝りたいって言ってるからさ。連れて行ってくれない? 俺は16歳で二人乗りはできないからさ』

メールを送信すると、俺はポケットに携帯をしまった

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