真面目なあたしは悪MANに恋をする
俺と茉莉は交互に2曲ずつ歌ったところで、俺は席を立った

『トイレに行ってくる』

そう言って会計を済ませてからカラオケの店を出ると、駐輪場に一台のバイクが入ってくるのが見えた

黒色のバイクから、175センチの男が降りる

バイクの色に合わせた黒に赤のラインが入ったヘルメットを外すと、ケンの切れ長の目が見えた

すぐに俺の顔を確認すると、少しだけ頬の筋肉を柔らかくして頷いた

「ハナちゃんなら、チョーの家にいるよ」

「わかってるよ。だから謝りに行くんでしょ」

「どうやってあの強情女を落とした?」

「別に俺は何もしてないよ。彼女自身が変わったんでしょ。あとはケンケンがどうにかしよね。ケンケンの彼女なんだからさ」

俺は自分のバイクに跨ると、ハンドルに引っ掛けておいた紺色のヘルメットをかぶった

「会計は済ませてあるから」

「お前の金?」

「ケンケンは持ってないんでしょ?」

「まあ、ね」

ケンが申し訳なさそうに苦笑した

「なら俺が払うしかないじゃん。だからって馬鹿正直に言う必要はないからね。茉莉には、ケンが払った言いなよ。男が女の前で、自ら恥をかく必要なんてないんだからさ」

「サンキュ」

「別に」

俺は、ケンに手をあげるとバイクのエンジンをかける

ケンケンがカラオケ店の自動ドアに向かって歩き出すのを見てから、俺はバイクを走らせた

俺の役目はこれで完全に終わったよね
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