真面目なあたしは悪MANに恋をする

茉莉side

―茉莉side―


歌…終わっちゃったけど…

私はシミだらけの天井を見上げた

なんで天井に染みがあるんだろう

床に染みがあるなら、食べモノが落ちたとか、煙草の灰が落ちて汚れたとかってわかるけど

なんで天井?

酔っぱらいが、何か投げてぶつけたのだろうか?

私は染みを眺めながら、ため息をついた

あと5分もしたら、葉南に謝るんだなあ…なんて他人ごとのように思ってみる

緊張はしてない

葉南には悪いことをしてるってわかってるのに、どうして私はあんなことをしてしまったのだろう

どうして私は他人のモノが欲しくなってしまうのだろう

他人が大切にしている人、物…なんでも横取りしたくなる

私はあの子よりも『魅力のある女』…あの子よりも『価値のある人間』、そんな風に思いたいからかもしれない

『どうしてあんたは、こんな点数しかとれないの! 家庭教師にいくら払っていると思ってるのよ。塾だって、成績が全然、あがらないじゃない』

ヒステリックに怒鳴る母親の声が私の脳内に響く

『人と同じにやって駄目なら、倍以上の時間をかえて勉強するのよ。寝るなんて許さないわ。もっと勉強しなさい。もっと成績をあげなさい。遊ぶ時間なんて、あんたに必要ないのよ』

母親の言う通りにやっても、成績なんてあがらなかった

むしろ、自由気ままに学校帰りに寄り道してた友人たちのほうが成績が良かった

寝る間も惜しんで勉強しても、学校で睡魔に襲われて…気を失うように眠ってしまうなんてよくあったし

帰りの電車内で、寝過ごして遠回りして家に帰ったこともあった

そしてまた母親に『あんたは時間の使い方が下手なのよ。どうして時間ばかり食うやり方しかできないのっ!』と怒られる


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