真面目なあたしは悪MANに恋をする
「やっほー! お迎えに来ましたぁ」

部屋のドアが開くと、一際明るい声が室内に響いた

あいつよりはるかに高い位置にある目を、私は見上げるとぽかんと口を開いた

「な……んで?」

ケンを見る

ケンも私を見て、にこにこを笑っている

帰ったって聞いたけど、どうしてここに?

「あっれあれぇ? どうしてそんな暗い顔をしてるの? もっと笑いなってば」

ケンは私の前に膝をつくと、頬をぶにっと抓った

「いたい」

「ん。だから笑って」

「あいつは?」

「マサのこと?」

私は頷くと、ケンが目を細めて笑顔を見せた

「帰った」

は? 何、それ。何、勝手に帰ってるのよ

駅まで送ってくれる約束なのに、送る気なんて最初からなかったんだ

どうせ…そうよね

みんな、そう…約束は破るためにあるみたいな感じでさ

口だけなんだよ

口だけが正論を述べて、行動なんて伴ってない

だから、信用したくない

信用したら、痛い目を見る

「…なんだ、馬鹿みたい」

私は立ち上がると、鞄をひっつかんだ
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