真面目なあたしは悪MANに恋をする
「意味は…ないけど」
「古傷があるとか?」
ケンがバイクから降りると、私の手首を掴んで素早く時計を外した
どうして…やめてよ!
「嫌だっ、外さないでよ」
ケンの手の中で男物の時計がぶらぶらと左右に揺れていた
ケンは私の手首を見て「やっぱり」と呟くと、まるでミルフィーユのように何重にも重なっている傷口をなぞった
古くて茶色っぽくなってるものから、真新しい赤くなっている傷口までゆっくりと指先でなぞる
「前にいたんだよね。こうやって傷口を隠す子がさ。リストバンドじゃ、まるわかりだからって、男物の分厚いバンドの時計をしてる女の子がさ」
ケンが腕時計を、ポケットの中に入れてしまう
「ちょ…返してよ」
「嫌だね。こういうことする子、好きじゃないんだよ」
「最初から好きでもないくせに」
「あ、バレてた?」
ケンが笑った
偽りの笑顔
本気で笑ってない
私だって、好きじゃない
仮面をかぶってる男なんて
本心を見せない男なんて、大嫌いだ
「時計、返してよ」
私は、手のひらをケンの前に出す
ケンは首を振ると、バイクに跨った
「後ろ、乗ってよ。チョーの家まで行こう」
私は傷のある手首を、反対の手で撫でてからケンの後ろに座った
「しっかり掴まっててよ」
私って何なんだろう
葉南に謝るだけのために、ここにいて…謝ったら、用のない女になる
私を本気で心配して、声をかけてくれる人なんてどこにもいなくて…葉南のため動いてる人間たちによって、私の行動が決まってるかと思うと
私って何のためにここにいて、何のために呼吸をしてるんだろうって思う
なんで私の心臓は動いているんだろう
「古傷があるとか?」
ケンがバイクから降りると、私の手首を掴んで素早く時計を外した
どうして…やめてよ!
「嫌だっ、外さないでよ」
ケンの手の中で男物の時計がぶらぶらと左右に揺れていた
ケンは私の手首を見て「やっぱり」と呟くと、まるでミルフィーユのように何重にも重なっている傷口をなぞった
古くて茶色っぽくなってるものから、真新しい赤くなっている傷口までゆっくりと指先でなぞる
「前にいたんだよね。こうやって傷口を隠す子がさ。リストバンドじゃ、まるわかりだからって、男物の分厚いバンドの時計をしてる女の子がさ」
ケンが腕時計を、ポケットの中に入れてしまう
「ちょ…返してよ」
「嫌だね。こういうことする子、好きじゃないんだよ」
「最初から好きでもないくせに」
「あ、バレてた?」
ケンが笑った
偽りの笑顔
本気で笑ってない
私だって、好きじゃない
仮面をかぶってる男なんて
本心を見せない男なんて、大嫌いだ
「時計、返してよ」
私は、手のひらをケンの前に出す
ケンは首を振ると、バイクに跨った
「後ろ、乗ってよ。チョーの家まで行こう」
私は傷のある手首を、反対の手で撫でてからケンの後ろに座った
「しっかり掴まっててよ」
私って何なんだろう
葉南に謝るだけのために、ここにいて…謝ったら、用のない女になる
私を本気で心配して、声をかけてくれる人なんてどこにもいなくて…葉南のため動いてる人間たちによって、私の行動が決まってるかと思うと
私って何のためにここにいて、何のために呼吸をしてるんだろうって思う
なんで私の心臓は動いているんだろう