真面目なあたしは悪MANに恋をする
部屋のドアを開けっ放しで、階段を下りて行った片岡君の背中を見つめた後、あたしはそっと廊下に顔を出して、下から聞こえてくる声に聞き耳をたてた

「この馬鹿っ、バイクから落ちやがった」

ケンケンの低くて、切羽詰まった声が聞こえてくる

「出血がひどいよ。とりあえずベッドに横にしよう。俺が止血するから。透理さんは救急箱を持って来て!」

次はマサ君の声がする

「なんで、落ちた?」

片岡君の声がする

「知らねえよ。もう少しだっつったら、あいつが急に手を離したんだ。こいつ、乗用に引かれるところだったんだ。おかげで俺のバイクがぺちゃんこだっつうの」

「ケンも怪我してるんだから、興奮しないでよね。余計、血が出る」

マサ君の怒る声が聞こえる

「俺より、こいつだよ!」

「わかってるよ。とりあえず、俺の部屋で止血をするから、俺の携帯で『飯山自宅』ってのに電話してよ」

「マサ、いいのか?」

片岡君の声がした

「考えている暇はないよね? 早く外科の医師に見せないと、茉莉って子の命が危ないよ。救急車を呼ぶより、オヤジを呼んだ方が早いんだから。早くっ!」

「わ…わかったよ!」

ケンケンがどこかに電話を始めるのがわかった

え? 今、茉莉って言った?

茉莉の命が危ないって、どういうこと?

あたしは部屋を飛び出すと階段を下りて行った

2階で、片岡君に横抱きされてる血だらけの女性をあたしは見つめた

ぐったりと両手を下におろしてゆらゆらと揺れている

「ま…茉莉? 茉莉なの?」

2階と3階の間にある階段の途中で足を止めたあたしは、顔面蒼白の茉莉を見た

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