真面目なあたしは悪MANに恋をする
「彼女の家族がくるまで、俺がきちんと傍にいるから。家族への説明も、病院の近くで事故ってたのを見て、俺が家の病院に連れて行ったって言うから。大丈夫だよ」

マサ君が、にこっと笑って部屋を出て行った

茉莉…どうしてあんな怪我をしたの?

なんで?

ケンケンは先に帰ったんじゃなかったっけ?

マサ君が部屋に戻って…それから茉莉に何が起きたの?

「葉南さん、詳しく知りたい気持ちはわかるよ。僕からマサとケンに事情を聞いておくから、今は帰ろう。彼女の家にこのことを教えないと」

あたしは頷くと、鞄を持って片岡君の部屋を出た

片岡君と一緒に、玄関を出ると、ケンケンが立っていた

壊れた黒のバイクの前に立って、茉莉のカバンを手にしていた

茉莉のブランド物のカバンは、ぼろぼろになっている

「ケン、大丈夫か?」

片岡君が後ろからケンケンの肩に手を置くと、ケンケンの体がびくんと跳ねた

「あ…な、何っすか?」

真っ青な顔をしているケンケンが、片岡君の顔を見るとぎこちない笑みを浮かべた

バイクを愛してたみたいだから、壊れちゃったのがショックだったのかな?

「無理するな」

「あ…あはは。嫌だなあ…チョーったら。俺はいつでも元気っすよ」

ケンケンがから元気な声で、鞄を持ってないほうの手をぶんぶんと回した

でもそんな行動とは裏腹に、ケンケンの目からは大粒の涙が頬を流れ落ちていった

「あれ…おかしいなあ。雨かな?」

「吐きだせ。心に溜めるな」

片岡君の言葉で、ケンケンの顔がくしゃくしゃになった

その場にうずくまると、壊れたバイクを手のひらで叩いた

< 189 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop