真面目なあたしは悪MANに恋をする
普通泣きながら、「ツイてない」とか「失恋した」なんて言ったら、「どうして」「何で?」って聞きたくなるものなのに

『良かったら相談に乗るよ』とか言って、心の傷をエグッてくる

なのに、片岡君は違う

何も聞かない、聞いてこない

全く関係のない話で、あたしの悲しい気持ちに蓋をしてくれる

「そうだ、この前から気になってたんだけど…キッチンの山田さんってまだいるの?」

「山田さんですか?」

片岡君が、聞き返してくる

「最近、見てないなあって思って。あたしとシフトがかぶってないだけかもしれないけど」

「辞めてもらいました」

「え?」

あたしは片岡君の顔を見た

片岡君はにっこりと笑っている

「彼、仕事できないから。僕から辞めてもらうように言いました」

「そうなの?」

「はい。なかなか覚えてくれないし、教えてもすぐに間違えるんですよね。その上、ホールの女の子たちにナンパまがいのことをして、ホールの子が困ってましたから」

「そうなんだ…知らなかった」

ナンパしてたんだ…てあたし、されてないけど?

全然、全く、これっぽちも

もしかして女としての魅力がない?
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