真面目なあたしは悪MANに恋をする
「勝手に家を出て行った奴が、よく顔を出せたものだよね」

俺と同じ声が背後から聞こえてきた

俺はファイルを棚の上に置くと、ゆっくりと振り返った

俺と同じ容姿の男が、腕を組んで立っている

違うのは髪と目の色

俺があえて変えたモノが違うだけ…あとはそっくりな双子の兄が鋭い目で俺を睨んでいた

「病院を利用しただけだけど」

「病院じゃないでしょ。親父を電話で呼び出しておいて…やっぱお前って最低だな」

俺と同じ顔で、俺を馬鹿にする存在

それが政巳

嫌な顔だよね

俺と同じってのが気に入らないよ

「家に帰ったわけじゃないから」

「帰ってこられても困るし、お前の居場所なんてもう無いしね。部屋も俺の書庫にありがたく模様替えさせてもらったよ」

「そう。使い道のある部屋で良かったよ」

「邪魔なんだよね」

「なら、家に帰るといいよ。道がわからないなら、教えてあげようか…兄さん」

俺の言葉に、政巳がむすっとした顔をした

「俺のコピーが五月蠅いんだよね」

「五月蠅いのは兄さんでしょ。病室にきて、そんな陳腐な言葉しか吐けないなら、さっさと家に帰って学校のお勉強でもしたらどうです? 大学は医学部に進学するのでしょう? 浪人したら、家の恥ですから」

俺はにやりと笑うと、兄さんが苦虫をかみつぶしたような顔をする


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