真面目なあたしは悪MANに恋をする
ナースステーションにいる看護師に俺は声をかけた

もう一度、茉莉の腕に針を差し込むと点滴を再開した

「傷、痛む?」

二人きりになると、俺は口を開いた

「うっさい」

「…ごめん」

俺は棚の上に置いたファイルを手に取ると、開いた

ぺらっと捲る音だけが、室内に響いた

「お願いだから…放っておいてよ」

茉莉が小さな声で呟いた

「無理だよ」

「何で? 簡単なことじゃん。あんたが家に帰ればいいんだから」

「わからないけど…今の君を一人にしたくない。俺じゃなくて、ケンがいいなら、すぐに連絡するから。言ってよ」

「一人がいい」

「無理」

「だから、何で? 葉南への仕返しは終わったんでしょ? それとももっと私を苦しめたい?」

「違う」

「なら帰ってよ。私が一人がいいって言ってるの」

「君の両親に、引き渡すまできちんと面倒をみるって言ったから…」

『ぷ』と茉莉が噴き出すと、くすくすと笑い出した

「ほら、『葉南』を中心に世界が回ってる。お願いだから、帰ってよ。葉南を連想させるモノを見たくないの」

俺はファイルを閉じると立ち上がった

「わかったよ。廊下にいるから、何かあったら呼んで」


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