真面目なあたしは悪MANに恋をする
「もうリストカット、すんなよ。俺の時計あげるからさ。リストカットしたくなったら、俺を呼んでよ。すぐにマリを抱きしめてあげるから」

「は?」

ケンが手首についている腕時計を外すと、私の手首に付け替えた

白い包帯の上に、ぶかぶかの腕時計がごろんと動いた

私はわけがわからずに、ケンの目をじっと見つめて首を傾げた

意味がわからな過ぎて、考えることすらできないんだけど

ナニ?

なんでケンは、愛おしそうに私を見ているの?

そんな目で一度も見たことのない人が、昨日、何かあった?

…て、私がバイクから落ちたのが原因なんだろうけど…態度が変わりすぎでしょ!

マサ、早く戻ってきてよ

嫌なんだけど、この空気

靴下も、トレーナーもまだあるし、まだこの病院のどっかにいるよね?

また、ケンとバトンタッチしたわけじゃないよね?

ガチャっと音がすると、ドアがゆっくりと開いた

「あ、ケンケン! 連絡、入れようと思ってたんだよね」

マサが明るい声で口を開きながら、病室に入ってきた

マサの声にケンの顔が一気に険しくなる

くるっと私に背を向けたケンは、マサの首を腕で押して壁にマサを追い詰めた

勢い余って、マサの後頭部がごんと壁に打ち付ける音がした

「ちょ…ちょっと!」

私は起き上がると、慌ててベッドから出ようとする

マサが、私に首を横に振る

グリーンの目で『来るな』と訴えていた

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