真面目なあたしは悪MANに恋をする
こんな風に、片岡君の話をするのは初めてだったんだよね

男の人と話すのって、すごく緊張するのに、片岡君は違った

なんか話しやすいって思うのは、同じバイトのせいだろうか?

それとも年下だから?

じゃないなら、最悪な日に話をしたから…緊張する暇もなかった?

「明日は5ラスですよね?」

片岡君が質問してきた

『5ラス』というのはバイトのシフトで17時からラストまでのことをさしている

「うん、そうだよ。片岡君は?」

「明日はオールです」

マンションの出入り口で、足を止めると片岡君がさらりと言葉を出した

「ええ? 開店からラストまで?」

「はい。店長が忙しいみたいで、僕は冬休みで暇ですから」

「いやいやいや、でも…」

「今、キッチンは店長と僕と、寺島君、それにパートの岸さんですから。岸さんはお子さんがおられて、冬休みの間は無理でしょ? 寺島君は、シフトの予定表に明日の午後からじゃないと無理ってあったので」

あ…寺島君ねえ

明日の午後まで、予定があるんだあ

それは茉莉とクリスマスを過ごすってことなんだろうねえ

「大変じゃない?」

「なら、手伝ってくれますか?」

「ええ? それはぁ、もしやただ働きっていう奴ですか?」

「違いますよ。キッチンを手伝ってくれるなら、店長に話をしますってば」

「なら、いいよ」

あたしはにこっと笑う
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