真面目なあたしは悪MANに恋をする
「君さ…ギリシアの哲学者ソクラテスの言葉で『無知の知』って知ってる? 自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。知らないってことがどんなに恥ずかしいのか、まだ君は知らないんだろうねえ。幸せだね」

マサが寺島君ににこっとほほ笑んだ

「真の知への探求は、まず自分が無知であることを知ることから始まるんだよね。無知は必ずしも悪徳とはされないけれどさ。、無知を罪とする見方もあるのも現実だよね」

「マサ、少し言い過ぎだぞ」

「嬉しいことがあったからさ。つい口が、元気になっちゃって」

マサが肩をすくめた

嬉しいこと…それはケンとの和解だろうな

ずっとマサは気を使ってから

ケンと茉莉のために、一歩身を引いて生活をしてた

「…で、いつまでいるの?」

マサが寺島に再度質問をした

「お前らに俺の気持ちがわかるか!」

マサがくすっと笑うと、楽しそうにほほ笑んだ

「わからないよね。知りたいとも思わない。負け犬の気持ちなんてさ。さっさと帰りなよ。逃げるしか脳のない犬は、さ」

マサの言葉に、寺島君は立ち上がった

小柄なマサの胸倉を掴むと、拳を振り上げる

僕は、座ったまま文庫本を手に取ると、しおりを挟んでおいたページを開いた

勝敗は決まってる

「あんたのチョーは、お前を助ける気はないとさ」

「助けてもらう必要もないけどね」

マサが明るい声で、返事をした

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