真面目なあたしは悪MANに恋をする
「やっておしまい」

千明が、低い声で吐き出した

青のつなぎを着ている男たちが、僕を追い詰めていく

逃げる気もないけど、ただたんにやられるだけってのも嫌だよね

千明に殴られるなら、わかる

きちんとした理由があるから

でもこいつらにやられる理由なんて、僕にはないよ

僕は腰を低くすると、殴りかかってくる男たちの腕を交し、最低限の反撃をした

15分もなかったと思う

気がつけば、屋上に無傷で立っているのは千明と青の族長だけとなった

浩太がお腹を押さえながら、苦しそうに顔を歪めて立ち上がる

「な…んで? 拳を振り上げただけで泣きそうな顔して、逆らわなかったのに」

「人は変わるよ、浩太。翔を守れなかったのを後悔してるんだ。もっと力があれば、もっと強ければ…もっと自分の心に正直に生きていれば…。何度もそう思った。どんなに悔いても、悔やんでも過去は変わらなかった。過去が変わらないなら、未来を変えるしかないだろ。翔を守れなかった…なら、今ここで、この現実で困ってる人を守るしかないんだ。守れる力を手にいれなくちゃいけないんだ」

浩太が鼻で笑い、馬鹿にしたように唾を吐き捨てた

「僕は、浩太とは違う。命の終わりを目にして『落ちろ』と笑って言えない。誰かの肩を突き飛ばして、『死ね』とは言えない。僕のこの手は、誰かを突き飛ばすためあるんじゃない。守るためにある。だから、守る。翔にできなかったことを、他の苦しんでいる人たちにしてあげたい。翔を守れなかったときと同じ後悔は、もうしたくないんだ」

「良い正義感だわ。翔を守れなったくせに」

千明が、腕を組んで僕を睨んだ

「翔を助けられなかったのは、本当に申し訳ないと思ってます」

僕は頭を深々と下げた

「謝ってすむとでも?」

「いいえ。だから許してもらおうとは思ってません。僕がいけなかったんですから」

僕は顔をあげると、千明の目をまっすぐに見つめた
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