真面目なあたしは悪MANに恋をする
千明が僕から視線をそらした

行き場のない感情をどうしたらいいのか…きっとわからないのだろう

「さっきから聞いていれば、綺麗ごとばかりを述べる男だな。虫唾が走る」

青の族長であるルイが、唇のピアスを揺らしながら口を開いた

青色のつなぎを着て、手にはナイフを出して刃の部分をぺちぺちと手のひらで叩いている

僕より身長は低いが、ガタイがある

肩幅が広く、力はありそうだ

僕は、目を細めると、ナイフに目を落とした

太い刃が、僕の血を欲しているかのようにキラリと輝いた

「貴方には関係のないことだ。綺麗ごとだろうが、なんだろうが…それが僕の生きる道だ。ただ暴力だけで、この街を制しようとしてるあんたとは違う」

「ああ?」

ルイが、機嫌の悪そうな声をあげた

「おいっ! 賢悟、わかってるのかよ。あの人は…」

浩太が、僕のシャツを引っ張った

同級生としてのよしみだろうか?

それとも僕がただ何も知らないお坊ちゃまにでも見えているのだろうか?

青の族長に、無謀にも果敢に挑もうとしているか弱きウサギに見えているのだろう

浩太も佑介も、弱かった頃の僕しか知らないから

逃げるだけの…ただ従うだけの男だった僕しか知らない

浩太の腕を僕は振り払った

「知ってるよ。青の族長・ルイでしょ」

「知ってるなら…逆らわないほうが…」

「死にたいのかよ」

浩太の次に、倒れたままの佑介も僕に言ってきた

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