真面目なあたしは悪MANに恋をする
逃げる男を追いかける趣味は、僕の中には存在しない

だからいくら青族の長だからといっても、僕に背を向けた男に刃を突きたて、恐怖をあおるつもりはない

「ちぇ、無傷で帰還ってわけだったのになあ」

マサが不服そうに頬を膨らませた

肘から手首にかけて、ナイフで斬られた痕を眺めると、流れ落ちていく血を残念そうに見送った

「マサには無理だったんだよ。あの男を一人で抑え込むなんて」

ケンが口から流れた血を舐めると、顔をしかめた

「ケンだって、一人で突っ込んで殴られてんじゃん!」

中学の門を出た僕たちは、自分たちが止めたバイクの前で傷を見せ合った

「チョーも、なかなかの勲章っぷりっすね」

ケンに目の上にできた傷を、指でさされた

口の中も切ったようで、少し痛みがあり、血の味がしている

「力だけはあったからね」

僕が苦笑すると、申し訳なさそうに後ろからついてくる千明に目をやった

「馬鹿そうな顔してるのに、力だけはあったよね。ああいうのが一番、手に負えないから困るよね」

マサが口を開きながら、僕と同じように千明を見つめた

「何も知らなかったから、許してね…って言い訳は俺らには通用しないよ」

マサの声がワントーン下がった

「マサ……いいんだ」

「良くないよね。俺らのチョーが怪我したんだ。黙って見過ごすなんてできないよ」

マサは無表情で、千明を見ていた
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