真面目なあたしは悪MANに恋をする
「許して欲しいと請うつもりはない…って言われた時は、むかってした。なんて横柄なヤツなんだろうって。人の命をなんだと思ってるの?って思った」

ぼそっと小さな声で、千明が言葉をこぼした

「それで?」

「今思えば、誠意ある態度だったんだなあって感じる。逆に、浩太たちの言葉が、薄っぺらく感じた。全て片岡賢悟がいけない。あいつが翔をいじめて、殺したんだっていっつも口を合わせて言ってた。俺らは助けようと思ってたのに…て言いながら、青のツナギを着て、カツアゲとか脅しとか…弱い者ばかりを苛めてた。もっと早くに、気づくべきだった」

千明が肩をがっくりと落として、目には涙をためていた

「いいんじゃない、別に。今、気づけたんだから」

「えっ?」

「何?」

千明が驚いた顔で、俺の顔を見ている

「もっと早く気づけよって思わないの?」

「思わないよね。過去のことを、責めても何も変わらない。今、気づけたなら、それでいいじゃん。今、ここから自分の過ちを修正すればいいだけのことでしょ?」

…て前に同じようなことを、茉莉にも言った気がする

気づけただけ、マシだよね

俺は…気づけてる?

きちんと、自分の過ちを修正できているのだろうか?

俺はひときわ煌々と光りを放っている建物に、視線が動いた

塾…か

高校受験のときに通って以来、塾になんか目もくれなかったなあ

遊び半分で、受けた進学の名門校…兄さんの名前で受験した

どうせ受かるはずがない…そう思ってた

俺の頭で行ける学校じゃないと思ってたら、合格してた

なぜ、兄さんの名で受験してしまったのだろうって後になって後悔した

自分の名前だったら、今頃、俺が通ってた

受験に失敗した兄さんを尻目に、俺が高校生になってたはずだった

合格確実とまで言われてた学校にまで失敗した兄さんは、受けてもいない高校に入学した

黙って受験して悪かったね…なんて笑いながら

俺の努力を奪っていった

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