真面目なあたしは悪MANに恋をする
千明を送って自分のアパートに帰る頃には、もう日付を跨いでいた

腕時計についている針は、深夜零時半をさしている

俺はすっかり血がとまった傷口を見ながら、アパートの階段をのぼった

痛いけど、それほど深くはないみたいだね

病院に行かなくても平気そうだし、シャワーで血を流したら、今日はもう寝ようっと

2階の廊下を歩きだすと、自分の部屋の前に人影があった

ドアの前で座り込んでいたのか、俺と目が合うなり、人の影は長く伸びた

「今夜、泊めてくんない?」

ケンが苦笑して、肩すくめた

俺は鍵を出すと、キーホルダーを指先に差し込んでクルクルとまわした

「とうとうヤッたの?」

「たぶんね。二人とも部屋から出てこないからさ…戻るに戻れなくて、ね。俺もさ」

ケンがツナギのポケットに両手を突っ込んで、口を尖らせた

「まだ確定じゃないんだ。チョーは、慎重派だよね。付き合ってもう4ヶ月は過ぎるでしょ?」

俺は鍵穴に鍵を差し込んだ

くるりと手首を返すと、がちゃりとロックが外れる音が聞こえる
< 254 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop