真面目なあたしは悪MANに恋をする
「もう一発、殴ったほうが目が覚める?」

ケンが拳をつくって、俺の眼前でちらつかせた

「もう目が覚めたよ」

俺は口を緩めて笑った

捜して欲しい

見付けて欲しい

ここに居ていいんだよと言ってもらいたい

そうだ…俺は、家に居ていいと言ってもらいたかったんだ

でも言ってもらえなかった

邪魔だとも言われなかったけど、戻って来いとも言われなかった

一人で生きていけてると勝手に信じられた

一人で生きていけない兄さんだけが、両親に受け入れられてるのが辛かった

「少し出かけてくるよ。これ、アパートの鍵だから。帰る時は、鍵を閉めて、ポストに入れておいてよね」

「わかったよ。ごゆっくり」

「煩いよね」

俺はにっこりとほほ笑むと、ケンとハイタッチをしてアパートを後にした


アパートの駐輪場には、鍵がささりっぱなしのバイクが置いてあった

ケンが持ってきてくれたのだろう

血も止まってるし、痛いけど…いいよね

俺はヘルメットをかぶると、バイクに跨った
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