真面目なあたしは悪MANに恋をする

「謝るなんて…僕は何もしてませんから。むしろ頭を下げるのは僕のほうで…」

僕は千明の腕を掴むと首を横に振った

千明は僕から離れると、鈴木先生の前に立ってまた頭をさげた

「先生っ。私、間違ってました。何度も、ご相談に乗っていただいたのに、すみません。本当は相談しているふりをして、翔を殺した人を捜そうとしてたんです。復讐したくて。同じ目に遭わせたかった。人を殺しておいて、一人だけ良い学校に行って、何事もない顔で生活しているのかと思っていたら、イライラして……どうにかしてやりたいって思った」

「千明さん…」

鈴木先生が、千明の肩をそっと抱きしめた

「苦しかったでしょ？」

「先生たちが知っている話は、真実じゃないって知りました。翔の友人だと思ってた浩太や佑介は…友人なんかじゃなかった。私、あいつらに裏切られて…」

「え？」

鈴木先生の体がびくっと反応した

「千明さん、翔の死は僕の責任ですから」

千明の言葉をさえぎるように、僕が口を開いた

「でもきちんと罰せられるべき人間は、貴方じゃなかった。私、ずっと憎むべき人間を間違ってた。改心するべき人間は、今も同じ過ちを繰り返してる。そんなの間違ってる」

千明が僕の顔を見て、高ぶった感情をぶつけてきた

目を赤くして、涙が今にも零れ落ちそうだった

「千明さん、それはどういうこと？」

鈴木先生が、千明の顔を見て質問をした

「僕が翔を死なせた事実は変わらない」

千明の口が動く前に、僕が鈴木先生に言った

「違う。だって、翔はあいつらに突き落とされそうになった片岡君を守ろうとしただけ。あいつら、私に向って『馬鹿は死んで当然なんだ』って笑って言ったのよ。許せない」

浩太、佑介…そんなこと言ったのかよ

千明が、翔の姉だって知ってて、そんな酷いことを言ったのかよ