真面目なあたしは悪MANに恋をする
「離してよ。好きな人に『好き』って言うのって凄く勇気がいることじゃない? それを最初から冷たく突き放すのってどうかと思う。『好き』って言ってもらえないと自信を持てない人だっているんだから。それと今夜は、アパートに帰らないから」

「は? 何で?」

『アパートに帰らない』という茉莉の言葉に、俺は茉莉の今までの言葉が全て吹き飛んだ

茉莉の細い手首をぎゅっと強く握ると、嫉妬で自分の心が苛ついてるのがわかった

「いいじゃん、別に。私たち、付き合ってないんでしょ?」

茉莉が冷たい目で、俺を見ると、手を振りほどこうと上下に振った

「男と会うんだ」

「どこで何をしようと関係ないでしょ」

「あっ、そう。好きにすれば」

俺は茉莉に背を向けると、従業員出入り口の扉を開けて、中に入った

燃えるゴミの籠を見つけると、空の牛乳パックを叩きつけた

「くそっ。何なんだよ」

朝見たメールの男と会うのだろうか?

それとも昨日一緒にカラオケに行った他のメンバーの男か?

俺の全く知らない男…とか?

寺島とか言ったら、怒るよ

俺…マジ切れすると思うよ

誰と会うのさ

仕事が終わった後の夜に会う人間は誰だよ

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