真面目なあたしは悪MANに恋をする
呼吸を整えていると、北見の体が寝がえりを打った

スカートがずり上がって、白い太ももが露わになった

ああ…服が皺になっちゃうねえ

だからって脱がすわけにもいかないしなあ

起きてくれると、助かるんだけどな

店のママにも伝言を頼まれてるし…終電の前に目が覚めてくれるといいんだけど

俺は腕時計を見つめた

午後11時半を針がさしている

あと1時間で起きてくれれば、俺は家に帰れるかな?

明日も大学があるし、家に帰りたいんだよね

そうだ…そろそろハナちゃんとチョーが寄りを戻してるころかな?

チョーはつらい過去を背負いながらも、『愛』を求めた

俺はたいした過去はないけど、『愛』から遠ざかった

『愛』がなくても生きていけるけど、『金』がないと人は生きていけない

金のない苦しみはもう二度と味わいたくない

あんな想いをするくらいなら、愛情なんていらない

大切な人を作りたくない

家族なんていらないよ

俺の覚えている父は、家じゅうの通帳を持って女と逃げるように家を飛び出した背中しか知らない

身体の弱い母が、父の家でやっていた靴屋を必死に切り盛りして…女好きで遊び好きの父は家に寄り付かず、愛人と遊んでいた

働かない父を怨み、働けない母にもイラついた

金のない生活に飽き飽きした

その日その日の食事さえ間々ならない生活の中、俺は身体を売るのを覚えた

俺の体でも金になる

そう知ってからは、高校の授業料も全て己の体で稼いだ

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