真面目なあたしは悪MANに恋をする
「送ってもらってありがとう。ホントにごめん。終電とかってまだある? 大丈夫?」

北見が鞄の中に手を突っ込んで、腕時計を出してきた

「12時過ぎちゃってるけど、平気? ああ、どうしよう。もしなかったら、ここに泊ってもいいけど…綺麗なとこじゃないし、透理君に悪いよ。どっかのホテルに…なんて言いたいけど私、ホテル代を出せるほどお金なんてないし」

北見が困った顔で、いろいろと提案を出している

別に、そこまで北見が心配することじゃなと思うけど?

さっきまで悲しい目をして泣いていたのに、もう俺の心配をしてるよ

職を失って、金を作らないといけないっていう危機的状況で、どうして他人の心配なんかするのさ

「別にここで平気だよ」

俺は作り笑顔で笑うと、肩にかけてある鞄を畳の上に置いた

帰ろうと思えば、まだ終電に間に合うのに…どうしてだろう

俺は、ここに泊る決意をしていた

「本当に大丈夫? 布団、使っていいから。私は畳で平気だから」

北見は布団から降りると、俺のほうにずずっと白い布団を横移動させた

「気にしないでいいって。俺も似たような生活環境だし、座ったままだって寝られるし」

「駄目だよ! 透理君はお客様なんだから」

俺は首を横に振った

「気にしないでって言ってるだろ」

赤族の奴らと行動してると、どこででも寝られるようになるんだよね

カラオケで一晩中歌うことだってあるし、バイクで走りすぎて野宿をすることだってあるんだから

どこでだって、俺は寝られる

なのに、どうして北見は気にするのだろう

俺は平気だって何度も言っているのに

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