真面目なあたしは悪MANに恋をする
「一つ首にならない仕事があるんだけど…やる?」

「え?」

俺の言葉に、北見の肩が動いたのがわかった

がさっと音がして、俺の首筋に北見の息がかかる

「北見の体、俺に頂戴。後悔させないよ」

俺も身体を動かして、北見を見つめた

北見が驚いた顔をして、俺を見ている

その中には戸惑いと怒りが含まれているのが、俺にはわかった

俺はふっと笑みを見せると、枕に頭を乗せた

「変な意味じゃないよ。無理やり抱くつもりもないし、ただ俺、たぶん一生…誰かを好きになるって経験はないと思うんだ。男が好きとかそういう意味でもないから。女性は抱ける…でも、その裏に大金がないと無理なんだ。そんなの俺の母親は知らない。だからさ、俺の彼女になってよ。俺の家で自由に生活していいから。それなら家賃の心配も、バイトの心配もないから。俺の家は靴屋だし、そこで手伝ってくれればいいからさ」

北見が目を丸くした

ぱち、ぱちっと大きくまつげが上下に動いた

「え?」

間をおいて、北見が声を出した

「理解してる?」

俺が聞くと、北見が首を横に振った

「俺の嫁候補になってってこと。本当に結婚しなくていいからさ。母親の前で、そういうふりをしててよ」

「あ…えっと、いいの?」

「いいよ…って俺がお願いしてるんだけど?」

「あ…じゃあ、よろしくお願いします」

北見がぺこっと頭を動かした

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