真面目なあたしは悪MANに恋をする
「やっぱりこれ…多いよ」

2階にあがってきた鈴菜が、俺の部屋に入ると口を開いた

俺は鞄を畳の上に置くと、鈴菜に振り返った

「とりあえずそれで遣り繰りしてみて。余ったら貯金でもしてよ。溜まったら旅行に行くっていうのでもいいし、一人暮らしの資金にしたっていいよ」

「でも…」

「いいんだ。俺の身の回りのことしてもらってるんだし、母の面倒も見てもらっちゃってる状態なんだからさ。気にしないでよ。1ヶ月のお給料だと思って」

俺は鈴菜の肩を叩いた

「OLだってこんなに貰ってないよ?」

「そう? ま、いいじゃない。貰えるときに貰っておきなって。俺だって、バイトによって出せるお金が上下するんだから」

俺は笑うと、凝り固まった肩を腕をまわしてほぐした

「ねえ、透理君のバイトって何? 私、聞いてなかったよね?」

「あれ? 言ってない?」

俺はとぼけた声を出した

言ってないよ

聞かれても真実を答えるつもりはないけどさ

でも俺の好みの女性は知ってるよね?

それで想像してよ

「ホストだよ」

きちんとホストとしてバイトを始めたのは、つい最近だけどね

ケンのお勧めの店で、働いてるよ

ちゃんと稼がないと…って思ったからさ

小遣い稼ぎ程度じゃなくて、ちゃんと金になるようにしないとさ

鈴菜に満足してもらえる生活にならないだろうし…後悔はさせないって言った手前、それなりに働かないとね

< 355 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop