真面目なあたしは悪MANに恋をする
深夜3時、俺は自宅の敷地内にバイクを入れると、鍵を開けて家の中に入る

家の中は真っ暗で、静かだ

母も、鈴菜も寝ているんだろう

足音に気をつけて、自分の部屋に入ると、鞄の中に入れてあるスーツを出して洋服ダンスの中にしまった

勉強机の上に鞄を置いて、電気スタンドの明かりをつけた

布団の中で寝ている鈴菜の寝顔が見えた

あれ? 髪、切った?

俺は、布団の横に座ると鈴菜の髪に触れた

前髪が短くなってる

頬を撫でながら、すっと髪の毛先まで指で滑らせた

長さも変わってる

さっそく美容院に行ってきたんだ

「透理君? 今、帰って来たの?」

鈴菜が眠そうにうっすらと目を開けると、俺に微笑んだ

「あ、ごめん。起しちゃった?」

「ううん。平気だよ」

「髪、切ったんだ」

「あ…よく気がついたね」

鈴菜が嬉しそうに笑うと、細い指で前髪をいじった

「気づくでしょ」

「そう? 男の人ってこういうのに疎いって聞くけど」

「俺のバイトを舐めないでよ」

鈴菜がくすくすと笑うと、寝がえりを打って俺のほうを向いた

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