真面目なあたしは悪MANに恋をする
鈴菜が彩加さんが噛んだ耳たぶに触れた

「歯型だ。初めて見た。痛かった?」

俺は首を横に振った

少し痛かったけれど、それよりも嫌悪感のほうが酷かった

どうして、こんなにも嫌になってしまったのだろうか?

今まで平気だったのが…いや、むしろ幸福を感じていたものが全く逆の感情を抱くようになった

家で誰かが待っている生活なんて、嫌だって思ってた

自由に思うように時間を使わせてほしいって思ってた

母親の悲しそうに見つめる視線が嫌いだった

なのにどうして?

鈴菜は違う

他のどんな女性とも違う感情を…感覚を俺にさせてくる

俺の指先は、思わず鈴菜の唇をなぞっていた

「透理君?」

鈴菜の問いかけに、俺ははっとする

何をしているのだろう

ぱっと、鈴菜の顔から指を離すと、作り笑顔で微笑んだ

「気になるなら、歯型つけてあげようか? 俺的にはキスマークのほうが好きだけど」

「え?」

鈴菜の顔が驚きの表情になった

「冗談だよ」

俺は布団をポンポンと叩くと立ち上がった

「俺も、着替えて寝ようっと」

鈴菜に背を向けると、俺は明るい声でそう呟いた

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