真面目なあたしは悪MANに恋をする
「茉莉を布団で寝かせたいんだけどねえ」

俺がテーブルに戻ってくるとマサがぼそっと呟いた

テーブルに顔を伏せて、茉莉ちゃんが眠っている

「マサも帰っていいよ。俺がケンに付き合うから」

「でも…」

「いいって。大丈夫だよぉ。茉莉ちゃん、あれじゃあ風邪をひいちゃうよ」

「ありがとうございます」

マサが、頭を下げるとテーブルに手をついて立ち上がった

ケンがマイクを持って熱唱しているなか、マサは茉莉を起こして部屋を出ていった

「ちょっ…なんだよぉ。みんな、帰ってさあ」

たて続けに10曲を歌い終えたケンが、ふくれっ面で俺の隣に座ってサワーを一気に飲み干した

「みんな、それぞれに生活があるんだから」

「…わかってる。透理の小言は聞きたくないよ」

「小言じゃないよぉ」

ケンが髪をかきむしると、畳の上にごろんと横になった

「ああ、どっか良い女はいないかあ」

ケンが大の字になって、叫んだ

「良い女はたくさんいるよ。ただ俺らが良い男じゃないんだよ」

「あ…そうだな」

ケンが目をぱちくりすると、にへらっと笑った

笑って細くなった目尻から、一筋の涙がこぼれた

「今日、墓参りに行ってきたんだ。そしたらさ、あいつのお母さんがいて。思いきり、叩かれたぁ。痛かったなあ」

「今日の荒れた理由はそれかあ。俺やマサを振り回すのならいいよ。でもハナちゃんや茉莉ちゃんを振り回したら、いけないよ」

「…そうだなあ。女性の夜更かしは肌に良くないしなあ」

「そうそう」

俺が頷くと、ケンが起き上がった

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