真面目なあたしは悪MANに恋をする
「なあ、透理。運命の女性っていると思うか?」

「さあ? どうだろうねえ。でも俺らの傷を癒してくれる女性ならどこかにいると思うよ」

俺の言葉に、ケンが肘で脇腹を突いてきた

「ずいぶんと真面目なお答だこと」

「俺はいつだって真面目だよ」

「ホストを辞めて…どうしてるんだよ。普通のバイトなんかしてさ」

ケンが、マサが残していったウーロン茶に手を伸ばした

「俺もよくわからないんだ。お金を持っている人にしか欲情しなかったはずなのにさ。そうじゃない人が現れたら、今までの行為が気持ち悪くなった。だからホストも続けられないって思った」

「…じゃあ、透理は、傷を癒してくれる女と出会ったんだ」

「たぶんね」

「俺だけか。見つかってないのは…」

ケンがテーブルに顔をつけて、ため息をついた

「こんなところで酔っぱらってたら、見つかるものも見つからないよ」

「そりゃそうだ」

ケンが肩を震わせて笑った

「怖いんだ。あいつより大事な人を見つけるのが。俺は、あいつのためを思って離れたつもりだったのに、結果的にあいつを追い詰めて苦しめた。それが事実だ。だからその先に進める自分がいるのが怖い。あいつはもう…先に進めないのに、俺だけが進める場所にいる。それが苦しい。墓参りになんか行くんじゃなかったなあ」

ケンが寂しそうに笑うと、目を閉じて寝息を立てた

…え? そのタイミングで寝るの?

やめてよ…ケンは身体が大きいんだから、一人で歩いてもらわないと困るんだけど!
< 372 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop