真面目なあたしは悪MANに恋をする
「なんで? だって学校じゃ、全然話してなかったじゃない。仲良くだってなかったのに」

桜木の手がそっと俺の手のひらの中に入ってきた

胸を俺の腕につけてくると、甘えているように頬を肩にすりつけてくる

「私のほうが、鈴菜より仲良くしてたのに。なんで卒業後に親しくなってるのよ」

「知らないよ、そんなの」

俺は桜木から顔を背けた

やめてよ

こういうのは嫌いなんだ

俺は鈴菜がいいって言ってるだろ

横から奪おうとするような女に興味なんて出ないよ

胸を押しつけても、俺は欲情しないよ?

そこらへんのエロオヤジたちと一緒にしないでほしいよ

「ねえ、知ってる? 鈴菜みたいな女なら、きっと話してないと思うから言っておいてあげる。あの子、別にお嬢様ってわけじゃないのよ。父親の会社が倒産して、父親が自殺、母親は男と逃げたのよ。知ってた? 鈴菜はきっと透理君と付き合いたくて、そんな事実言ってないと思うんだけど」

俺、こういう女が一番嫌いなんだよ

知ったかぶって、好きな男を落とすためにほかの女を蹴落とすような話しばかりする女って嫌い

やめて欲しいよ

「だから? ちゃんと聞いてるよ。俺だって、金持ちの息子ってわけじゃないし。そこらへんはお互いに納得して付き合ってる。手、離してよ。もう戻りたいんだけど」

俺は腕を振って、桜木から離れると店の中に戻った

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